11/24/2013

氷の鏡 序章

「なぜ....言ってくれなかった...」

ドンッと『鏡』を両の拳で叩き、額を押しつけ、イザークは苦渋に満ちた声を絞り出した。応える声は、ないとわかっていながら。

凍てついた暗闇の中に、クククククッ...と忌まわしい笑い声が響く。

「さあ−−−どうする、『天上鬼』よ?」

暗闇に浮かび上がる、小さな人影。

イザークが、拳を壁に打ちつけたまま、ゆっくりと顔を上げる。
振り返らないまま、目の前の『鏡』を睨みつけるその漆黒の瞳は、怒りと憎悪に満ちていた。ぐっと握った拳が、小刻みに震える。

「......」

鏡を挟んで、イザークの拳の向こう側には、薬指に蒼銀色の指輪がはまった、白い手。
凍りついて、動かない−−−−。

そのすぐ横の闇に映し出されたのは、イザークの背後に立つ、『少女』の姿。

やわらかな波打つ金の髪。薄紫の瞳。
視えるはずのないその瞳は、まっすぐにイザークの背をみつめている。

「答えを聞かせてもらおう、『天上鬼』」

神殿中央の祭壇上に置かれた燭台の灯りの中に、一歩踏み出し。
イザークに向かって、小さな右手を差し出す。

「『目覚め』を生かすも殺すも、そなたの答え次第−−−−」

ジーナハースの声と姿で、『それ』はイザークに語りかける。

「簡単なこと。そうであろう?」

クククククッ.....。

(ノリコ−−−−−−)

一瞬、ぐっと固く目を閉じて。
ゆっくりと、本当にゆっくりと、イザークが振り返った。


2 件のコメント:

  1. にゃんたろ2013年11月26日 0:33

    ぬわっっ!!  つ・・・続きがめちゃ気になります。。。。
    月下草読んだ後は これはこの続きはきっと結婚式だわね むふふ と思ってたところ
    だっただけに びびっておりますーー^^;
      

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    1. にゃんたろさん、メッセージありがとうございます。
      結婚式は...多分書かないかも�� ちょっとまだ具体的に頭の中で話がまとまってないので。これは、結婚後、の話になっちゃいます。ちょっと長くなりそうなので、その途中でまた結婚式とかほかの話にも戻るかも、ですが。気長におつきあいくださいませ。

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